接近!UFOズ / 夜の川を見れば

7/16の我々なみのりの自主企画イベント「How are you?」の出演バンド紹介のために始めたこのブログ。2回目の更新です。
前回のベランダに引き続き今回は接近!UFOズについて書いてみたいと思います。
何はともあれまずはこのMVをみてください。

youtu.be

僕が京都を好きな理由の3割くらいは「鴨川があるから」だ。 
鴨川は色々な人たちを受け入れてくれる。等間隔で座るカップル、川遊びをするファミリー、楽器の練習をする人、飲み会をする学生、ランニングする女性、四角いベンチを日サロがわりに使う半裸おじさんetc...
京都は古い町並みや歴史と新しい文化・芸術が共存していてとても混沌としている。碁盤の目のように張り巡らされた路地は一本一本が違う表情をしており、お店の一軒一軒がそれぞれ独自の雰囲気を持っている。

こんな風に「魑魅魍魎のように個性が渦巻く街」というのが僕の京都へのイメージだ。そしてそれが体現されているのが鴨川だと思う。 

接近!UFOズの「夜の川を見れば」で歌われている川が鴨川なのかは分からないけれど、僕はこの曲を聴くと夜の鴨川を思い浮かべずにはいられない。
時折淀みながらも滑らかに流れていくベースラインはそれこそ川のよう。その上で跳ねるドラムとギターのカッティングは夜の三条大橋の喧騒を想起させる。いや、喧騒そのものではなく喧騒の光と音が川に乱反射している様だろうか。まさに夜の川を見ているようなイメージ。

流れる水にバイバイ 君はどこへゆく
忘れてしまう友のよう 川の上渦を巻く 
すれ違う人たちは 誰も泣かないよ
街の上から見下ろせば 違って見えるのか

この歌いだしの歌詞がすごく好きだ。
"流れる水"を"友"と称して、その行く末を思っている主人公。
きっと夜の街の喧騒の中にはそんな風に川の水の行く末に思いを馳せている人はいないだろう。喧騒の脇で川を見下ろす人たちでさえ、水との別れを悲しむ気持ちなんてないはずだ。
主人公は川べりからただ一人独自の視点を持って、川を眺めている。ともすれば泣いてしまいそうな気持ちで。

…というのが僕のイメージ上の主人公なんだけれど、こう書いてみると過剰におセンチかつ感受性が高くて心配になっちゃいますね。
でも、こういう気持ちになっちゃうのはなんとなく共感できる。夜の鴨川は過剰に抒情的なんです。

それとこの歌詞は一見抽象的でさらりとしているけれど、流れる水との別れに着目するアイデアは面白いしすごいと思う。
川の流れに人生や時の流れを重ねるのは詩の常套手段だけれど、川の水そのものを擬人化する視点は作詞作曲の佐藤くんの発見かもしれない。(そういえばこの曲が収録されているアルバムの名前は「水の発見」ですね)

続く2番の歌詞はドキドキする内容。

つまらない明日にバイバイ 僕はどこへゆく
聞こえる足音も 影も まだ付いてくる
僕の知る人たちは みんな泣くけれど
そこに出くわすことなんて ほとんどないものだ

 "友のよう"と称していた流れる水に、今度は"僕"を重ねているのだろうか。
昨日や今日ではなくまだ未確定な"明日"を"つまらない"と言ってしまえる感覚はとても危うくて、それゆえすごく甘美だと思う。
僕は最近こういう感覚はなくなってきたけれど、学生時代はそれこそ夜の鴨川を見ながらたまにこんな気持ちになっていた気がする。
未来の可能性は広がっていてすべてが未確定。完全に子供でも完全に大人でもない浮遊感のある生活。心もなんだかフラフラふわふわしている。夜になると生も死も両方すごく近い位置に感じられるような、そんな感覚。

ここでの川には此岸と彼岸を隔てる三途の川のイメージも重なる。
そういえば三途の川を渡りきってしまうとそこはいわゆるあの世なわけだけれど、その間の三途の川はいったいどこからどこへと流れていくんだろう。
いつかは海に出るんだろうか。その海は現世なんだろうか、あの世なんだろうか。そしてその水はいつかは循環してまた三途の川になるんだろうか。そういう輪廻転生もあるんだろうか。
でも今ちょうど目の前を流れているこの水のことは、仮に今は思いを馳せていたとしても、すぐに忘れてしまうんだろう。

 

とつらつら「夜の川を見れば」について思うことを書いてきました。
この曲、CD音源も最高ですがもちろんライブも最高です。
なにせ接近!UFOズはめっちゃフィジカルで最高なライブをします。フィジカルに訴えかけてくるライブです。つい体を揺らしたくなるし、ともすれば踊りたくなります。
以前僕がUFOズのライブを見たときは、隣で一緒に見ていた兼田くん(なみのりの鍵盤担当)とお互いの体を興奮に任せバシバシ叩きあいながら見ていました。
特に「水の発見」の1曲目の「トンビ、回る」と、CDには入っていないですが「首ったけ」という曲の演奏中は脳内物質がドバドバ出て恍惚の表情でバシバシ叩いていたのを覚えています。
7/16もきっとそんな演奏をしてくれるんじゃないかと思います。とても楽しみです。

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ベランダ / Let's Summer

はじめまして。大野です。なみのりというバンドをやっています。
7/16に初めての自主企画イベント「How are you?」を大阪の難波artyard studioにて開催します。そのイベントに出てくれるベランダと接近!UFOズという素晴らしい2バンドを紹介できたらなと思ってブログをはじめてみました。
まずはベランダから。僕が大好きな「Let's Summer」という曲について思うところを書いてみようと思います。

soundcloud.com

昔、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが「Over Drive」というラジオ番組をしていて、当時中学生だった僕はその熱心なリスナーだった。
その番組で発売直前(だったと思う)のELLEGARDENのMissingがオンエアされたときゴッチが「この曲を聞いたとき思わずガッツポーズをした」と言ったんだけど、この「〇〇を聞いてガッツポーズをする」という表現が何だか良いなあと思って僕もその後よくこの表現を使うようになった。たまに実際にガッツポーズもする。

去年の9月に初めてこの「Let's Summer」を聴いたとき、1番のAメロ時点でガッツポーズしたのを覚えている。

ノイジーな音色のアルペジオに甘く歪んだギターのフレーズが重なり裏拍から始まるフロアタムの8分連打、まずこのイントロがすごくワクワクする。
でもその後に続くAメロではそれまでの逸る気持ちが軽やかにすかされる。ギター2本・ベース・ドラムの隙間のあるアンサンブルはなんだかチルくて、日陰で涼しい風を受けている夏の風景が浮かんでくる。
具体的には田舎のおばあちゃん家(日本家屋)の縁側で座ってるイメージ。僕の実際のおばあちゃん家は縁側ないんだけど、日本人の心の原風景的なものの一つですよね。

そのAメロで歌われるのは緩やかだけど確かな"別れ"ときたら、これはもうガッツポーズをとるしかなかった。

ワンダーランドの成れの果て 愛着はないけど
お別れとなると都合もよく 涙が出るんだな 

この「ワンダーランド」って何なんだろう。
いろいろなものを当てはめられるような気がする。
今年の夏、過去の夏、青春、恋愛とか。
アルバム「Any Luck to You」上での前曲「早い話」の歌詞にある"甘い魂胆"と解釈するのも綺麗かもしれない。
(ちなみにこの「早い話」という曲も最高な曲です。一筋縄ではいかないちょっとひねくれた進行なのに、抜群にポップで気持ちいい不思議な曲。MVに映るメンバーもなんか全員可愛いです)

僕はこの「ワンダーランド」に"自分の学生時代"をあてはめて聴いている気がする。社会人になった1年目のときは自分の価値観・考え方・立ち居振る舞いとかもろもろが変化していくことに違和感や怖さや寂しさみたいなものをすごく感じていて、この歌詞を聞くとその頃の気持ちを思い出します…

僕は特に1行目が好き。
歌詞の中では"愛着はない"と言っているけど、こう言われると逆に否応なく愛着が伝わってきますよね。"ワンダーランド"と呼んでるのに"愛着がない"ってのも矛盾してるようで、でもなんだか共感できるような気がする。
それとそもそもこの"愛着はない"って言葉自体が面白い。"ワンダーランドの成れの果て"にまさか"愛着はない"が続くとは予想できなくて、不思議で心にひっかかる。

2行目の「涙が出るんだな」は映像的でフィジカルなフレーズで、抽象的な言葉からすっとこの歌詞につながるところに何ともいえないカタルシスがある。

この先の歌詞もすごく良い。

ありとあらゆる町の片隅で
三つ編み ほどけていく 

このサビ前の歌詞なんてもう最高。
さっきの「涙が出るんだな」と同じ映像的な歌詞で、いろいろな町の夏の風景と三つ編みを解いた女の子の髪が風になびき始めるスローモーションの映像が浮かんでくる。なんとなくその風は海から吹いているような気もする。
現実に三つ編みがほどける様なんて僕はほぼ見たことがないんだけど、なぜか懐かしい感じのきれいな情景。

去年この曲を知ったのはもう夏が終わる9月だったから、今年初めて7,8月の夏真っ盛りの時期にこの曲を聴ける。秋や冬に聴いても良かったけど、やっぱ冷房の効きが微妙な電車の中とか、窓を全開にして"強"設定の扇風機の風を受けながらとか聴くのも格別だろうなと思う。
基本的に夏は暑いから好きじゃないんだけど、それは楽しみです。

 

ちなみにこの曲、ライブで聴くのも格別ですよ…!
ベランダは歌よし、アンサンブルよし、コーラスワークよしで本当に素晴らしいライブをします。
この頃は毎週日本のどこかでライブをしているようなので、ぜひライブを見に行ってみてください。

そして、もし良かったら7/16に難波artyard studioで見てみてください。

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